最近良く耳にするガルバリウム鋼板。
屋根材や外壁材として急速にシェアを伸ばしています。
鋼板そのものは鉄を主体とした合金なので、それほど珍しいものではありません。
トタン屋根や折板屋根の素材として、昔から用いられていました。
ガルバリウム鋼板が従来の金属材と違うポイントは、特殊なメッキを施していること。
アルミニウムや亜鉛を使用したメッキを施すことで、従来よりも錆びにくく、耐久性に優れているという特徴があるのですね。
01亜鉛めっき耐食性01より引用
ここまで読むと「ガルバリウム鋼板はメリットしかない!」と勘違いされそうですが、もちろんそんなことはありません。
ガルバリウム鋼板はメンテナンスフリーと謳っている業者もありますが、鵜呑みにしてはいけませんよ。
メリットに加えて、デメリットもしっかりと把握しておきましょう。
ガルバリウム鋼板のメリットを具体的に見ていきましょう。
金属系建材の宿命として、錆びやすいというデメリットがあります。
古い家のトタン屋根に赤い錆が発生しているのを見たことはありませんか?
トタン屋根にも防錆塗装などをすればある程度防ぐことはできるのですが、塗膜の下から腐食して膨れ上がる現象(エッジクリーブ)は避けられません。
しかしガルバリウム鋼板は特殊なメッキ&塗装を施すことにより、金属系建材の宿命である錆を避けられるのです。
プレコート鋼板の中でも長期耐 久性が要求される屋外建材用の多くは,屋外ばくろ数年 でエッジ部より進行する塗膜下めっき層のフクレ状腐食 (エッジクリープ) が停止する特性を有し1)-3) ,建材の長 寿命化が期待できることから,55%Al-Zn めっき鋼板 (ガルバリウム鋼板,以後 GL 材と称す) を母材とし,プ ライマー塗料にはクロメート系防錆顔料が用いられた塗 装鋼板の仕様となっている.
引用元:塗装 55%Al-Zn めっき鋼板用防錆塗料及び 防錆顔料のエッジクリープ抑制能力
もちろん絶対に錆びないということは言えません。
ただ従来の金属系建材に比べれば、大幅に耐食性が向上したと言えるでしょう。
海の近くは向いていない
耐食性が向上したとはいえ、海の近くの家でガルバリウム鋼板を使うのは避けたほうが良いでしょう。
塩害により錆が発生しやすい環境だからです。
クルマや家電製品と同様に、塩害によって寿命が短くなってしまう傾向にあります。
海の近くの家では、
というスタンダードな建材をオススメします。
錆さえなければ、金属系建材は非常に耐久性に優れています。
錆を防ぐ被膜の寿命が、金属系建材の寿命。
従来のトタン屋根(溶融亜鉛めっき鋼板)だと被膜寿命はせいぜい10年程度ですが、ガルバリウム鋼板は25年程度の耐久性があります。
これはアメリカでの実験(屋外暴露試験)により証明されているもの。
メッキの中の亜鉛&アルミニウムの自己修復機能により、長期間の耐久性を実現したのですね。
もちろん実際の環境では傷がついたりといったアクシデントもあるので、実験結果の通りにはいかないでしょう。
湿度が高く自然災害の多い日本では、アメリカと環境が異なりますし。
ただ従来のトタンなどとは比べものにならない耐久性がある、というのは事実です。
私が考えるガルバリウム鋼板の最大のメリットが、軽量であることです。
特に地震や台風などの災害が多い日本では、軽い建材というのはメリットだらけです。
重い瓦屋根が原因で地震で家が潰れたり、強風で瓦が飛ばされて窓が割れたり、といった被害はよくニュースになりますよね。
ガルバリウム鋼板のように軽量であれば、大地震が起きてもそれほど負荷にはなりません。
建物の構造に負担がかからないので、家が倒れるリスクが少なくなるのですね。
また軽量なので、実際の施工でも取り回しがラクで工事の進捗が早いというメリットがあります。
また既存の外壁を覆うようにガルバリウム鋼板を貼り付ける、カバー工法というリフォームも選択できます。
カバー工法であれば通常の外壁張り替えに比べて、
というメリットがあるので、最近は外壁リニューアルでカバー工法を選ぶ人も増えていますね。
以上がガルバリウム鋼板のメリットです。
次にデメリットについて見ていきましょう。
ガルバリウム鋼板の外壁材・屋根材のデメリットは以下の通りです。
ガルバリウム鋼板は、建材としては高い部類に入ります。
窯業系サイディング (普及品) |
ガルバリウム鋼板 (SF-ガルスパンJ) |
|
---|---|---|
材料費 | 4,230円/㎡ | 6,000円/㎡ |
工事手間 | 2,820円/㎡ | 3,270円/㎡ |
合計 | 7,050円/㎡ | 9,270円/㎡ |
一般的な窯業系サイディングと比較すると、外壁面積(㎡)あたり2,000円以上の差が出てしまうのですね。
窯業系 | 916,500円 |
---|---|
ガルバリウム鋼板 | 1,205,100円 |
外壁の塗り面積を130㎡とすると、30万円程度の差額。
なるべくリフォーム費用を抑えたい人からすると、見逃せない差になってしまいますね。
金属は熱伝導率が高いので、ガルバリウム鋼板そのものに断熱性能はありません。
ただ建材として販売されているものは、鋼板に断熱材を裏打ちしています。
この断熱材によって熱を伝えないような構造になっているのですね。
この断熱材は、種類によって性能に差があります。
例えば安価なロックウールなどは性能もそれなりに低いですが、比較的高価なPIRフォーム(ポリイソシアヌレート)であれば高い断熱性能を期待できますね。
■高断熱・遮熱性
引用元:断熱素材『PIRフォーム(ポリイソシアヌレート)』 | イノアックコーポレーション - Powered by イプロス
■イソシアヌレート構造が燃えにくさを実現
■湿気を通さない仕組みが結露の抑制を実現
■天井材にも好適
■有害物質を出さず健康を考慮
■熱伝導率の高さと表面加工で熱から守る
したがってガルバリウム鋼板でも安価な商品だと、あまり断熱性を期待できないということになります。
国内で最も普及している外壁材は窯業系サイディングで、様々な色や質感が揃っています。
価格も手頃なものが多いですね。
一方でガルバリウム鋼板などの金属系サイディングは、メタリックな質感が中心です。
ピカピカのメタリックな質感は、かなり都会的なイメージ。
周辺の住宅が昔ながらのモルタル壁が多いと、かなり浮いてしまうかもしれません。
地域の状況を見ながら、判断していく必要がありますね。
最近は窯業系のような質感のアート処理をしたガルバリウム鋼板材も増えてきていますが、価格が高いですね。
メリットの項でも触れましたが、ガルバリウム鋼板が錆に強いといっても限界があります。
風に飛ばされた砂などで細かい傷が付き、そこから錆が進行するといったケースもあります。
寿命が長いとは言え、こまめなメンテナンス(洗浄・塗り替え)は欠かせませんね。
この後で自分でできるメンテナンス方法についても触れています。
それでは次に、ガルバリウム鋼板の錆の種類について見ていきましょう。
ガルバリウム鋼板に限らず金属の錆は、様々な原因で発生します。
ここでは錆の色に応じて、発生原因と対策を見ていきましょう。
赤色の錆は、ガルバリウム鋼板の原料である鉄が参加したもの。
赤錆が発生する原因として、
風雨で異物が飛んできたところに傷ができたり、砂鉄などが付着することで鋼板内部の錆へと繋がっていくのですね。
赤錆を完全に防ぐのは難しいですが、こまめな洗浄と塗装が対策方法として有効です。
白い錆はメッキ成分であるアルミニウムや亜鉛が酸化したもの。
メッキの役割として、アルミニウムや亜鉛が参加することで下地の金属を守るという働きがあります。
したがって白い錆はメッキが良い働きをしているということでもありますね。
ただ白い錆はメタリックな表面では、かなり目立つもの。
光沢感がなくなって、汚らしく感じてしまいます。
白い錆の対策方法としては、10年程度の間隔での塗装が適切でしょう。
下地処理をしっかり行った後に最初に塗る下塗りでは、鉄鋼材料と密着し防錆顔料が含まれている塗料を用い、次に水や空気から完全に遮断することはできないものの、ある程度の環境遮断効果があり、下塗りと上塗りそれぞれと密着性のよい塗料を中塗りとして塗装します。最後に、美観だけでなく、紫外線や耐候性に優れた塗料を上塗りとして使用します。
引用元:錆を防ぐ方法|防錆処理の種類と方法
塗料もクリヤー色だけでなく、様々な色や質感があります。
家の印象をリニューアルするという意味でも、大事なリフォームになりますね。
自分でできるガルバリウム鋼板外壁材メンテナンス方法として、洗浄があります。
ホースを使って水洗いするだけですが、こまめに行えば寿命を延ばすこともできますよ。
ただし2階や屋根などの高所は注意してください。
素人が高所作業をして、転落事故を起こすというケースが増えています。
無理せずに専門業者に頼むという判断も必要ですね。
優良な業者であれば、塗り替え工事のあとも定期的なメンテナンスをしてくれるところも。
アフターサービスも含めて、良い塗装業者を選びたいですね。